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ドローン業界ニュース

2022-01-31

ドローンで避難ルート見つけ出せ 神戸の埋め立て地、高校生の挑戦


 高さ7メートルの空中でホバリング(停止飛行)する1機のドローン(小型無人機)。「ほら、見てください。この角度からは直接見えないけれど、こうすれば何が書いてあるかわかるでしょう」。兵庫県立東灘高校(神戸市東灘区深江浜町)の1年、剣持春さん(16)が示したタブレット端末の画面には、校舎壁面の「東灘高校」の文字が映し出されていた。ドローンに搭載されたカメラは、操縦者のいる位置からは見渡せない道路や建物の様子をとらえていた。「人が近づけない所まで行けるのが利点です」

 同校では、生徒会や写真部、ボランティア同好会、新聞委員の生徒らがドローンの操縦に取り組んでいる。部活動や校内の行事の記録などに使っているが、災害時には生徒や教職員の安全確保に役立てる計画だ。これには学校の立地が関係している。

 同校は埋め立て地にあり、対岸とつなぐ1本の橋が地震や津波が起きた場合の唯一の高台避難ルートだ。地区内には大小の工場や物流センター、大型商業施設、市場もあり、避難時の混雑は必至。橋が被災して使えなくなる可能性もある。被災状況を人が移動して短時間で確認するのは、危険を伴い非常に困難だが、ドローンだと可能だ。カメラで生徒の顔を確認するなど、点呼や安否確認にも役立つという。

 ドローンが「見る」風景を手元のタブレット端末で確認しながら操縦するには技量が必要だが、生徒たちは物心ついたときからスマホやSNSが身近にあったデジタルネーティブ世代。操作のセンスが身についており、「離陸はアプリが行うので、慣れれば簡単」と口をそろえる。組み立てから操縦・分解をスイスイ行うボランティア同好会の2年、後田(ごうだ)裕太さん(17)は「ラジコンに比べ一つ一つの動きがスムーズ」と話す。

 剣持さんや辻川美紗希さん(16)、三木彩花さん(16)=いずれも1年=は生徒会に属しながら、地域防災を担う「防災ジュニアリーダー」を務め、災害への備えにもドローンを使いたいと考えている。現在温めている計画は、平時の学校周辺や埋め立て地の様子を撮影し、避難経路の3D(立体)マップを作成することだ。ただ、避難時の使用も含め実現には操縦者の数が必要となる。「災害の発生は昼夜を問わず、僕らが常に学校にいるとは限らない。操縦スキルを一人でも多くの生徒に伝えたい」(剣持さん)

操縦者が足りない現実

 災害や防災の現場でドローンの効果は絶大だが、課題にも直面している。

 2021年7月に静岡県熱海市で起きた土石流では、被災状況の調査に使われた。21年4月時点で全国724消防本部のうち383が火災調査や要救助者の探索などでドローンを導入しており、捜索時間の短縮や救助者の2次被害防止に役立つとして総務省消防庁もドローンの活用を推進している。しかしそこには、東灘高の生徒らも突き当たった「操縦者の育成」という大きな壁が立ちはだかる。

 「消防隊員は超多忙。出動や訓練、それ以外の業務の合間を縫ってドローンの学校に通って操縦を練習するのは、隊員や消防本部、自治体にとってあまりにも負担が大きい」。高知市消防局などとドローンの運用や訓練方法の改善に取り組む大阪工業大の樫原茂准教授(インターネット工学)はこう説明する。操縦者を育成する統一的なマニュアルは確立されておらず、現状は各消防本部任せになっているという。

 この課題の解決のため、まず取り組んだのは、個人のノウハウや捜索業務の整理だ。業務を細かく分類し、ドローンが捜索活動の中でいつどのように用いられるかを分析し、文章や図にまとめて人員配置を明確化した。

 さらに訓練方法についても検討した。樫原准教授は「操縦者全員にあらゆる技能を習得させてどんな状況にも対応してもらおうというのは、マンパワーや時間・予算的にも非効率だ。沿岸部では津波、都市部では火災、山間部では山岳遭難と、立地により必要とする技能は変わるし、消防の規模も異なる。各消防本部がそれぞれの事情に応じた技能訓練を行う仕組みが必要だ」と指摘する。

 すでに座学をオンライン化して消防局で受講できるようにするなど、試みは走り出しており、21年には大工大と同消防局、ドローン関連企業がマニュアル作成のための産官学連携の協定を締結した。樫原准教授は「ドローンを活用するという文化を消防局内や自治体に作れるかが、活用の鍵を握る」と話す。


コメント

 各分野で発展著しいドローンですが、企業のみならず高校生の間でもドローンを用いた活動が盛んに行われています。

 子供の頃からデジタル機器に慣れ親しんでいる高校生、更には必修化となった小学校でのプログラミング教育を受けた子供たちがドローンに興味を持ち、早い段階で操縦技術を習得すれば、今抱えている「操縦者の育成」問題の解決に繋がり、今以上の急速な発展が見られるのではないでしょうか。

 また、今では想像できないような方法や分野でドローンが活躍しているかもしれません。

 今回紹介した災害や防災におけるドローンの活用だけではなく、空飛ぶ車、映像制作、農業などの分野でも高校生が活躍しています。

 各分野で活躍する高校生を紹介した、以下の記事も併せてご覧ください。

「空飛ぶ車」、高校生の希望乗せてふわり
https://www.asahi.com/articles/ASQ1G6QGHQ1FPPZB007.html

【高知県四万十町】高校生がドローンを使って制作した地域と学校の紹介動画が完成!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000067456.html

長崎県内初 高校で「ドローンスクール」
https://news.yahoo.co.jp/articles/0a09ad29438e2aa570d612435f2e5b555c2eb93e