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ドローン業界ニュース

2022-08-31

都市部での飛行許可が免除!“釣り”の発想から生まれた西武建設の外壁検査ドローンシステム

【釣りのアイデアをもとにしたドローン外壁検査】

 「Japan Drone2022|第7回-Expo for Commercial UAS Market-」(会期:2022年6月21~23日、千葉・幕張メッセ)で、「釣竿とリール、その先にドローン」という異色の展示が目を引いた。日本建築ドローン協会(JADA)のブースに出品されていた「ラインドローンシステム」だ。

 ラインドローンシステムを開発したのはJADAの隣にブースを出展した西武建設で、正式名称は「西武建設式ラインドローンシステム」。釣竿(ブラケット)にセットされたリールから伸びるラインは、ドローンに取り付けたアダプター(治具)を介して、その先のセイフティポートへと続いている。そもそもが、「釣り好きの開発担当者のアイデアから生まれた」システムだという。

 西武建設式ラインドローンシステムの仕組みを簡単にいえば、建物屋上のブラケットと地上に設置したセイフティポートとのライン間を、係留したドローンが上下に飛行しながら写真撮影し、外壁検査する。アダプターを取り付けられる機体は、今のところDJIの「Phantom 3/4」と「Mavic 2」に限られるが、その他の機体向けにアダプター開発も進めている。

 点検対象が高層建物となると、どうしても都市部に集中する一方、都市部ではドローン飛行が別の電波などの影響を受けやすく、飛行が不安定になりやすい。「万一、墜落する事態になっても、ラインで地上(セイフティポート)の想定した位置に戻せるため、安全に検査できることがこのシステムを使用する最大のメリット」だと、西武建設 建築営業統括部 営業企画部 北村亮氏は説明する。

【足場要らずで外壁点検が効率化】

 また、通常の外壁点検では足場の設置が必要になるが、ラインドローンシステムならば、屋上にブラケットを固定するブラケットレシーバー、地上にはセイフティポートをそれぞれ設置し、順に横に移動させながら検査するため、足場を組むよりも短期間で効率よく作業にあたれる。北村氏は、「都内で実施した幅40メートルほどのマンション外壁検査では、ブラケットレシーバーとセイフティポートの位置を14回程度、横移動しただけで完了した。カメラの性能を上げれば、10回程度の移動で済むのでは」と見込む。

 これまでの導入実績は、焼却施設のコンクリート表面や区役所外壁、マンションタイルの劣化調査など、2021年5月時点で10件以上に使用されている。ラインドローンシステムの運用には、ドローンパイロット1人、ラインドローンシステム管理者1人、ラインドローンシステム管理者のサポート1人以上、ブラケット保持者2人以上が必要となる。ラインドローンシステム管理者の資格を取得するためには、JADAの建築ドローン安全教育講習会を修了した後、西武建設が実施するラインドローンシステム管理者講習を修了しなければならない。

 なお、ラインドローンシステムは、上下2カ所を固定することでフライアウェイを防止し、墜落しても離着陸箇所(セイフティポート)に誘導できる点と、外壁点検を行うために必要な安全管理体制/教育体制が整備されていることの2点が評価され、JADAの技術評価を受けている。

 コメント

 以前ご紹介した西武建設さんの「ラインガイド式ドローン」ですが、当時はまだサービス開始に向けた準備段階でした。

 しかし6月に行われた「Japan Drone2022」では、「西武建設式ラインドローンシステム」と名前を変え、既に導入実績10件以上のシステムとして出展してありました。

 以前より、ラインに繋がれている事で安全性が高いサービスと注目していましたが、20219月の航空法施行規制改正で、十分な強度を有する紐(ひも)など(30メートル以下)で係留し、飛行可能な範囲内への第三者の立入管理などの措置を講じた場合は、ドローンの飛行許可/承認が不要となったことも、システムを使用するプラスの要素になりました。

 現在、「ドローンの飛行ガイド装置」「外壁点検方法」「外壁点検システム」として特許を取得しており、「ドローンの離着陸装置」と「ラインドローンガイドシステム」としても特許を出願中との事。